昨年の12月にニュースにもなったので、ご存じの方も多いと思いますが、令和4年度の峯ヶ塚古墳発掘調査で石見型木製品が出土しました。
これは、埴輪のように古墳に立てていた「木製はにわ」や「木製立物」と呼ばれているものの一種です。
この「石見型」ってどういうものなのか、あと「現在まで16基の古墳からでしか出土しておらず」ということですが、どこの古墳でみつかっているのか、調べてみました。
「石見型」というのは、奈良県磯城郡三宅町の石見遺跡(古墳)で最初に見つかった特殊な形の埴輪につけられた呼び名です。
何の形なのか、まだ定説はありません。これまでは盾の一種と考えられていたので「石見型盾形埴輪」と説明されているものもありますが、近年では儀杖(儀仗)形や玉杖形とみられるようになっているそうです。
確かに、宝塚1号墳(三重県松阪市)の船形埴輪に立ててあるものを見ると、盾ではなさそうです。
宝塚1号墳から出土した日本最大の船形埴輪 - 文化財センター(はにわ館) - お肉のまち 松阪市公式ホームページ
石見型埴輪は、峯ヶ塚古墳の近くにあった(今はありません)軽里4号墳でも見つかっています。
よく知っている古墳なのに、今まで石見型だと気づいていませんでした(^_^;)。
次に、石見型木製品が見つかっている古墳について。
あれこれ検索していたら木製はにわが出土した遺跡の一覧表がある論文がありました。橋爪朝子さんの「木製立物の基礎的研究」という論文です。木製はにわの使われ方や石見型の変遷について書かれていてとても面白かったです。
その一覧表から石見型木製品が出土した古墳を書き出すと以下の17基になります。
01.御墓山(おおばかやま)古墳
02.小墓古墳
03.水晶塚古墳
04.唐古・鍵1号墳
05.笹鉾山2号墳
06.四条1号墳
07.四条2号墳
08.勝山東古墳
09.小立(こだち)古墳
10.つじの山古墳
11.服部4号墳(ただし「遺物出土状況図中に(略)石見型らしき木製品」との事)
12.服部19号墳
13.野洲大塚山古墳
14.林ノ腰古墳
15.保津車塚古墳
福岡県
16.釜塚古墳
国外でも見つかっています。
韓国
17.月桂洞1号墳
ただ、この論文は10年以上前のものなので、新たな出土もあるかもしれないと思ってさらに検索してみたら奈良県で1基ありました。
18.薩摩古墳群の3号墳
(北山峰生「薩摩古墳群と奈良盆地南縁地域の埴輪をめぐって」北山 峰生 (Mineo Kitayama) - 薩摩古墳群と奈良盆地南縁地域の埴輪をめぐって - 論文 - researchmap)
数が多くなってしまったので、16基というのは国内のみで、ハッキリわからないものは含んでいないのだと思います。
これに今回の出土が追加され
19.峯ヶ塚古墳
となりました。
以上の例からわかるように、限られた地域の古墳からしか出土していません。前述の論文の一覧表をみると石見型だけでなく、他の木製はにわとあわせてみても、ここに愛知県が加わるだけです。
木製品は残りにくいということもあるので、決めつけてはいけないのですが、木製はにわは埴輪のようには広まらなかったのかな?
これまで「木製はにわ」には全然注目していなかったのですが、調べてみて興味がでてきました。
*** 作画資料 ***
橋爪朝子「木製立物の基礎的研究」
橿原考古学研究所附属博物館「常設展示図録 大和の考古学」
飛鳥資料館カタログ第14冊「古墳を飾る 音乗谷古墳の埴輪」